日本人は素材をそのまま生かす文化を持っています。和食では食材の味を生かすように薄味で旬や四季の移ろいを大切にします。お部屋についても西洋はペンキなどで自分色に染め、重厚な扉で身を守る家が多いですが、日本の伝統建築は梁、柱などを木肌をそのまま見せる作りが一般的で、障子などの建具で曖昧に仕切ることで外との境界をなくし、家の中に自然を取り込もうとしました。城壁の作りも特徴的で西洋では焼き物で均一な形のレンガ作り、規則正しく積むのに対して、日本では自然のままの石の形を生かして独特の城の石垣作りを行いました。
このように日本人の心の中には素材をそのまま生かそうとする文化が根付いています。
いろいろなものから生命力を感じとっているからでしょうか。
木は特に古来より、日本の生活の中に道具、家、薪などとして深く入りこみ、切ってもきれない関係でした。しかし、今の時代コンビニや店舗や新築の住宅でも木目柄は見ますが本物の木を使ったものを目にすることはめっきり少なくなってきました。もう一度、見た目だけの木ではなく、リアルな木の生の感触や香りを、呼び戻してみてはいかがでしょうか。
私が作るときに無色透明のオイル仕上げが一番しっくりくるのも木のもつ生命力を生かしたいという日本の心が影響しているかもしれません。
川のせせらぎや鳥の鳴き声
風が木々を揺らす音
砂浜に押し寄せる波
ろうそくの火
木々の隙間から漏れる光
「f分の1のゆらぎ」とは規則正しさと不規則さがちょうどよいバランスで調和したパターンのことをいいます。このリズムは人間の心拍や脳波など生体のリズムにもみられ、同じリズムを感じることで、気分はリラックスできると言われています。
木材は地域や立地条件、太陽の光や風、温度などによって必ずしもまっすぐではなく均一に育つわけではありせん。そのため、木を切って板にしたときに現れる木目には心地よいズレやリズムが生まれ1/fのゆらぎが生じています。
このゆらぎの効果をうまく利用して家具や建築材料に木材を取り入れることで帰ってきたときにほっとできるお部屋になるはずです。
生活空間の中に1/fの揺らぎを持つ木材を加えてみてはいかがでしょうか。
森林浴をしたり、無垢材をふんだんに使われた家に入ると「木の香り」がしてリラックスして心地よく感じることがあります。この「木の香り」が人間の精神にとても有効な働きをしていると言われています。
「フィトンチッド」という物質が樹木から発散されているからだと言われています。
「フィトン」と「チッド」の合成語で「フィトン」は「植物」「チッド」は「殺す」という意味です。植物は動いて外敵から逃げることができないので、これを追い払う作用を持つ物質を自らつくり出し自分の身を守っています。
なおフィトンチッドの主な目的は次のようなものです。
1.忌避(きひ)物質・・・・・・樹木に害を及ぼす虫などを追い払う。
2.摂食阻害物質・・・・・・・・虫などに葉や幹を食べられないようにする。
3.抗菌・抗カビ物質・・・・・・カビや細菌を寄せつけない。
4.植物成長抑制物質・・・・・・別の植物が周りにはびこらないようにする。
このようにフィトンチッドは植物にとっては身を守るために作り出す物質ですが人体には天然の薬として作用し、交感神経の興奮を抑えて副交感神経を活発化させ、気分を安らいだ状態にする効果があるそうです。
また、タンス、まな板、寿司桶、お弁当箱など、古来より、フィトンチッドの抗菌消臭効果を活かした生活用品は数多くあります。木を使った生活雑貨を取り入れることで、暮らしの中でもフィトンチッドの効果を感じることができるでしょう。
私の工房は材木が山積みになっているので「木のいい匂い」がすると言われるお客様から言われることがあります。加工しているときには切削の熱によって木の香りを感じます。木によっても固有の香りがあり面白いです。同業の家具を作る方と会話しているとよく「どの木の匂いが好き?」という話になります。私は山桜を加工しているとき、ほんのり甘い香りがして癒されています。
最近、小中学校や幼稚園などを木造で作るところが増えているそうです。
取材した結果下記のような効果が見られたそうです。
「けんかが減った」
「いじめが減った」
「笑顔が増えた」
「裸足で遊ぶようになった」
知らないうちに心身が安らぎ、健やかな気分になるそうです。
①木の持つ温度や湿度を調整する作用により、森林浴に近い状態となり、気持ちがリフレッシュする。
②電磁波を吸収し、自立神経の乱れを抑制すること。
③木目の1/fのゆらぎ効果で心が穏やかになる
④木の目に見えない細かな凹凸が光を和らげ、目の疲れを軽減する。
⑤手足に触れる木の柔らかな感触が五感を刺激する。
⑥木の持つ芳香が安らぎを与える
⑦木の作用により、リラックスでき眠りが深くなる。
このような効果は家に木材を用いた場合でも同様の効果が望めるのではないでしょうか。古来より日本人は自然の中で調和しながら木と共に生きてきました。戦後から人工物に囲まれて暮らす現代の方が長い人類の歴史のなかではとても特殊な環境だと言えると思います。
木を内装に生かすことで家族みんなが健やかに過ごせる環境が整うかもしれません。
無垢のテーブルと一口にいっても値段もさまざまで質もマチマチです。
個人的、イチ家具屋の視点から「私ならこういうテーブルを買いたい!」と思う、無垢テーブル選びのポイントを書いてみようと思います。
無垢のテーブルの作り方は大きく集成材、一枚板、剥ぎ板の3つがあります。
こちらは別の記事にまとめていますのでこちらをご覧ください。
一枚板・剥ぎ板・集成材の違いは?
今回は一番よく出回っている剥ぎ板のテーブルに絞ってお話しようと思います。価格の違いには材料や製造のコストが大きく影響します。
まず、材料の価格の違いです。
パインや杉などの針葉樹であれば比較的材料は安価に流通しています。
また、広葉樹の代表的なものはホワイトアッシュ、タモ、ホワイトオーク、ナラ、アルダー、チェリー、ウォールナット、メープルなどが出回っており、ホワイトアッシュ、アルダーなどは比較的安価でウォールナットは比較的高価です。
広葉樹の方が比較的硬く、テーブルの凹みなどが少ないためテーブルに向いている材料といえるのではないでしょうか。写真は磨きやカットする前のウォールナットのテーブルです。
その他に価格に差が出る要因として製造元の違いが大きく影響します。作りや加工精度なども関わってくるため注意して選んで頂きたいポイントです。
①海外メーカーが海外で生産
質もマチマチでいいものと悪いものが混在しているという感じです。海外の量産家具屋はデザインや価格的に魅力的なものも多くありますが、ソリどめが不十分であったり、耐久性は疑問を感じるものもあります。デンマークの有名デザイナーの家具などは作りはしっかりしたものが多いです。テーブルなどは体積が大きいため輸入費用が実際の価格に載っている感じがして少し割高かなと思うこともあります。
②国内メーカーが海外で生産
人件費を節約するため、国内メーカーでも海外で生産しているところもあります。価格はお手頃なものが多いです。個人的な見解ですが横に並べた板の合わせ方がランダムに見えて少し雑かなと感じてしまうことがあります。反りどめはしっかりと入っているもの、入ってないものが混在しています。
③国内メーカーが国内で生産
国内生産の量産メーカーのテーブルであれば作りはしっかりしている印象です。NCなど機械を駆使した複雑な作りのものもあり真似できないなーと感じるものもあります。特別な要望がないのであれば品質も高く信頼できますがデザイン的に野暮ったいものもあるのかなという気がします。
④個人工房で生産
量産メーカーほど設備もないため作れる形も限られます。よいところは細かいオーダーに答えることができ、他にないオリジナリティーを感じるものがあるところでしょうか。価格は少量生産のため、比較的高めです。また、材料の仕入れが少量なため、各工房ごとに得意、不得意な樹種があったり、仕入れルートによっては割高になることもあります。認知度が低く、お店に置いていないことも多いため信頼できる家具屋を見つけるのが大変かもしれません。
※海外生産のテーブルが反りどめが不十分だった為、反ってしまった一例。修理を依頼され、一度天板を切って表面を削りはぎ合わせをやりなおしました。
■まとめ
私がダイニングテーブルを選ぶとすれば、国内メーカーか個人工房で作られたのものを選びます(贔屓目が入っているでしょうか??)。なんといってもテーブルは長く使いたいものなので変形(反り)が一番心配です。低価格の無垢のテーブルは反りどめが不十分であることもあるので購入前に注意が必要です。
また、剥ぎのテーブルの場合は作業者の性格や仕事に対する姿勢が出てくると思います。板に現れる木目は一つ一つ違い、均一なものはありません。板の並び方が意図せずランダムになるとそれぞれの板は魅力的な木目でもテーブル全体を見た時に魅力的に感じないこともあります。せっかく無垢のテーブルを使うのであれば材料選び、しっかりと木目を吟味して作ったテーブルを私は使いたいと感じます。その点、国内メーカーであればマニュアルもしっかりしていますし、品質は信頼できます。個人工房の場合も同様で作った人の個性や性格が見える点がおもしろく、安心なのではないでしょうか。
以上、非常に個人的な見解ですがテーブル選びの参考になれば幸いです。